アンリ・ルソー

ルソーは、19世紀~20世紀フランスの素朴派の画家。20数年間、パリ市の税関の職員を務め、仕事の余暇に絵を描いていた「日曜画家」であった。ルソーの代表作の大部分は彼が税関を退職した後の50歳代に描かれている。ルソーは税関に勤務した後、絵に専念するため1893年には退職して、早々と年金生活に入っている。税関退職前の作品としては『カーニバルの夜』などがあるが、『戦争』、『眠るジプシー女』、『蛇使いの女』などの主要な作品は退職後に描かれている。ルソーの作品には熱帯のジャングルを舞台にしたものが多数ある。ルソー自身はこうした南国風景を、ナポレオン3世とともにメキシコ従軍した時の思い出をもとに描いたと称していたが、実際にはルソーは南国へ行ったことはなく、パリの植物園でスケッチしたさまざまな植物を組み合わせて、幻想的な風景を作り上げたのであった。また、写真や雑誌の挿絵を元にして構図を考えた作品のあることも判明している。ルソーの絵に登場する人物は大概、真正面向きか真横向きで目鼻立ちは類型化している。また、風景には遠近感がほとんどなく、樹木や草花は葉の1枚1枚が几帳面に描かれている。このような一見稚拙に見える技法を用いながらも、ルソーの作品は完成度と芸術性の高いもので、いわゆる「日曜画家」の域をはるかに超えており、19世紀末から20世紀初めという時期に、キュビスムやシュルレアリスムを先取りしたとも言える独創的な絵画世界を創造した。1910年に肺炎のため没した。

(1844年5月21日 – 1910年9月2日)

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